コラム
第17回 期限管理の重要性~審査請求期限徒過から回復~
いくらよい発明を特許出願しても、審査請求をしなければ特許になることはない。その審査請求は、出願から3年以内にしなければならない。
コンスタントに特許出願をしている企業では、審査請求期限の6ヶ月前や3ヶ月前に、知財担当者から発明者に審査請求の要否を確認する。また、特許出願手続を代理した特許事務所もクライアント企業に対し、6カ月前、3ヶ月前、1ヶ月前と入念に要否の確認の連絡をする。審査請求期限は、徒過してはならない重要な期限なのである。
一方で、競合他社の特許出願についても重要なものは、審査経過を定期的に確認する。期間内に審査請求がなければ特許になることはなく、一安心となる。分割出願などの確認は必要であるが、審査請求期限が過ぎて半年も動きがなければ忘れてよい、はずである。
ところが、平成26年法改正によって、手続期間を徒過した場合における救済手続対象に審査請求が追加された。そして、特許庁のHPに「出願審査の請求の回復申請状況表」(https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/kaifuku_shinsei.htm)なるリストが掲げられた。審査請求期限を徒過した後に回復申請された特許出願のリストだ。これは競合相手から観ると恐ろしい内容である。
今回のコラムでは、期限管理のうち、特に重要なものの一つである審査請求期限途過の回復状況について調査・考察したので紹介する。
申請理由は様々
2017年8月現在、「出願審査の請求の回復申請状況表」に掲載されている特許出願は、31件、申請理由を分類すると下図の様になる。
最も多い申請理由は、不注意によるもので、関係者の休業・退職に伴う引継ぎミスや、海外代理人と国内代理人との伝達漏れ、管理システムへの入力ミスなどである。次に多いのが健康問題で、出願人側の担当者や代理人の病気のほか、交通事故もこの分類に含めた。環境問題は、特許事務所のパソコンがウイルス感染などシステムトラブルに起因するものである。申請理由が未公開など十分に確認できないものは不明に分類した。
図. 申請理由の分類(数字は申請件数)
通過する申請はごく僅か
では、いったいどれだけ申請が認められるのか。現時点で申請が認められているものは、3件である。上図では、「代理人問題」、「不注意と健康問題」、「不明」に分類されている。残りの28件は、最終処分として「未審査請求によるみなし取下げ」となっている。
申請が認められた3件のうちの1つは、代理人である弁理士が別件で懲戒処分を受けて、業務停止となったため、一見すると正当な理由といえよう。ただし、懲戒処分が下されたのが期限徒過の後なので、微妙な判断である。なお、この出願は後に拒絶査定となった。
2つ目は、早期審査の事情説明書を提出していながら審査請求をし忘れ、関係者の病気や体調不良が重なり、チェック体制が機能不全に陥って期限徒過した。理由を分割すれば「不注意」と「健康問題」に分類され、認められなかったものとの峻別が難しい。ただし、早期審査の手続きをしていたため、審査請求の意思があったことは明らかであり、複数の関係者が同時期に病気に罹患(りかん)したことを裏付ける診断書など客観的な資料は整っている。
そして3つ目は、現時点で詳細を十分に確認できないため「不明」に分類した。ただし、回復理由書の補足提出物件が20件もあり、提出物件の目録に記載された物件名から推測すると「不注意」の類と思われる。
いずれにしても、単純な理由では簡単に回復は認められないようである。詳しい要件は特許庁HPに掲載(https://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/kyusai_method.htm)されているので参照されたい。
そして、重要な期限を徒過させないためには、組織的なチェック体制の構築はもちろん、システムによる期限管理が欠かせない。
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弊社の知財管理システム「TOPAM」は、特許庁の審査経過情報(整理標準化データ)と連係しているため、入力ミスも防ぐことができる。また、電子カレンダーへの期限表示や、期限前のメール通知機能も備えている。
知財情報サービス「NRIサイバーパテントデスク2」では、生死情報(◎:権利存続中、◇:未審査・審査中、▼:登録後消滅、■:不登録確定)による検索や、結果一覧に生死情報を表示することが可能で、審査請求期間徒過からの回復にも対応している。
重要な知財を確実に守るためにも、信頼のおける事業者が提供する知財管理システムや知財情報サービスを利用することが肝要である。
NRIサイバーパテント株式会社 高野誠司